さあみんな、世界に行こう!

 さる著名な実業家・投資家である方から当社に対する投資の申出を受けた際、「常松さん、この事業を1千億円の規模にすることは考えられませんか?」と問われたことがあります。当時はコロナ禍による倒産の危機から脱しつつある時期で、回復基調にあるものの債務超過が続いていましたので、とてもそのようなことを考えられる状態ではありませんでしたが、その直後から「1千億円」という言葉がずっと頭に残ることになります。(結局、投資を受けるには至りませんでしたが)「1千億円なんて無理だよな」「どうしたらそんな規模を目指せるのだろう」などと考えるうちに1年が経過し、状況は徐々に変化していきます。

 そして、コロナ禍前と比較して3倍を超える売上規模になり、債務超過も解消した2024年のある日、「世界で勝負しよう」とほぼ確信をもって決断しました。改めて私たちの置かれている背景や抱えている事情、また事業の中身を考えるにつれ、実は様々な条件が揃っていることが見えてきたのです――。日本に比べて、他の先進諸国のインフレ率は高く購買力平価の差が広がっていること。円安が進行し為替による優位性があること。人口減少が始まっている日本社会でのドメスティックな経済活動は、必ず縮小に向かってしまうこと。「custom shirts」「print on demand」などのキーワードで当社と同業種・同モデルの企業が存在すること。同モデルの海外企業と比較して、当社のサービスは差別化され優位性が明確なこと。いかにしても「夏優位」の繁閑の差を埋めがたいこと。新卒採用を始め、今後40年間当社で働いてくれる社員が存在すること。将来の事業承継のためにIPO(新規株式上場)を検討しはじめたこと。そして何よりも、これほどまでにお客さまに喜んでいただける当社の事業モデルを世界の人々に問いたい、と思ったことです。
 2024年9月時点で新卒入社2年目の社員1名と、1年目の社員2名が主担当となり、新しい挑戦を始めました。私たちの事業は、人が集うことや繋がることで創造される多様なシーンをポジティブなものに変化させることができる可能性があります。日本国内だけでなく、世界の人々がほんの少しでも笑顔になれる瞬間をつくることができるのならば、それは一生をかけて取り組む価値があるものだと思います。東京でも大阪でもない、地方の、それもとりわけ人口の少ない山梨県という地にあって、さらに県庁所在地でもない甲斐市という小さな町から世界の人々を喜ばせる仕事ができるとしたら――。なんだか、考えるだけでもワクワクしてきます。
 さあみんな、世界に行こう!